玉島桃ジャムプロジェクト
~玉島の白桃・船穂のマスカット・真備のピオーネが奏でるハーモニー~
玉島商業高等学校 課題研究ベンチャービジネス
1 アイデアの概要・コンセプト
玉島の特産品、「清水白桃」を使用したジャムを開発、販売し、玉島を内外に情報発信することを目的としたプロジェクトです。最初は玉島産の桃を使った「桃のジャム」を開発する予定でした。その後地域の方(ステークホルダ)のアドバイスを取り入れながら試作を繰り返した結果、「玉島産の清水白桃を100%使用し、ふなおワイナリーのワインで芳醇な香りをつけたカクテルジャム」へと変化しました。今回のアイデアプランは、この商品が成長していく過程を記したものです。
2 アイデアの着想点・提案理由・提案の背景
岡山県の白桃の生産量(4,472t)は全国第1位で、56.1%のシェアを占めています。岡山の桃を総称して白桃といわれるほど、桃の代名詞を伴っており、「桃から生まれた桃太郎」でも有名です。しかし、玉島には白桃を加工した特産品がありませんでした。これについてヒントを教えてくださったのは、「玉島おかみさん会」の浅原真弓さんでした。そして、試行錯誤のうえ白桃を使ったジャムの開発をすることに決定しました。また、このジャム開発は、二ッチビジネスにつながる可能性も高いとのことでした。
3 提案する具体的な事業内容
カクテル・ジャム
浅原さんのアドバイスを受けて、今年度の開発商品は「ジャム」に決まりました。玉島といえばやはり「白桃」です。私たちは、玉島らしさを全面的にアピールできる、玉島産の白桃を使ったジャムを作ることにし、情報を集めることにしました。そこで商品製造の老舗である、玉島味噌醤油合資会社の代表取締役専務、中野旬一さんに相談することにしました。
本来、白桃でジャムを作ると、できたてのときは、白くてきれいな色をしています。しかし、時間が経つにつれ、色が変色していきます。この変色を防ぐために、白桃でジャムを作る過程で、ぶどう果汁を混ぜて、最初から色をつけてしまおうというのが、中野専務の提案する「カクテル・ジャム」です。
ジャム作りに関する基本的な方針と知識を得た私たちは、本格的にジャム作りに取り掛かることにしました。しかし、大切なことは、ジャムを作ることだけではなく、このジャムを商品として流通ベースに乗せて販売することです。そこで二人のステークホルダに来校していただき特別授業をしていただくことにしました。
ステークホルダーによる特別授業(5月7日)
くらしき作陽大学食文化学部商品開発交流研究センター主任、塩見慎次郎教授にはジャム作りの基本と、できたジャムが酸化して褐色色に変化する現象(褐変)の仕組みとその防止策について教えていただきました。白桃の細胞の中には、酵素とポリフェノールという成分があり、切ることによって、細胞が傷つけられ、細胞内の酵素が流出し、ポリフェノールと空気中の酸素と反応し、結果的に黒く変色してしまうそうです。
ポリフェノールとは、植物の苦味、渋味、色素の成分となっている化合物の総称のことで、桃に含まれているポリフェノールには、カテキン、クロロゲン酸、フラボノイド類があります。それらは、生活習慣病の予防・改善効果やダイエット効果、視機能改善などの効果が含まれています。また、桃にはビタミン、ナイアシン、食物繊維が含まれています。食物繊維が多く含まれているため、便秘予防効果もあります。さらに、糖尿病予防効果などが期待されているそうです。
ジャム作りのポイント
ブドウの品種・系統→欧州ブドウと米国ブドウの二大品種群に大別される
ピオーネ:巨峰とカノンホール・マスカットを交配・育成した品種
・ブドウの食品的特徴→主要な有機酸は、酒石酸(錆びた鉄のような味)とリンゴ酸、クエン酸
・ジャムの種類・特徴→ジャム類とは果実、野菜または花弁(バラ等)を糖類とともに加熱しゼリー化させたもの。
・ジャムの製造工程
玉島味噌合資会社専務、中野旬一専務には、ビジネスと原価計算・コストについて授業をしていただきました。今回のジャムを流通ベースに乗せるためには、製造原価以外に包装代、特に出荷時に必要となるダンボールなどの箱代まで計算に入れておかなくてはならないとのことでした。
・ニッチビジネスについて→業界や市場で隙間分野(ニッチは隙間の意味)を対象にしたビジネス
独創的なこの世にないものを創る
・情報発信の手段→口コミ、インターネット、メディア等
試作品作りに挑戦
中野専務と塩見教授の特別授業を受けた私たちは、いよいよ試作品作りに取り掛かりました。
それでも、今までに一度もジャムなど作ったことは無く、道具や原材料まで自分たちで買いそろえました。
『第1回目試作品作り』
Plan(計画)
1 日 時:平成25年5月28日(火) 5・6時間目
2 場 所:商品実験室
3 持参物:エプロン・三角巾
4 グループ分けと企画詳細
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Aグループ |
Bグループ |
Cグループ |
生産個数(瓶) |
10 |
10 |
10 |
なべ(個)
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1 |
1 |
1 |
ガスカセット(本) |
1 |
1 |
1 |
桃(清水白桃シロップ漬) |
1kg |
1kg |
1kg |
グラニュー糖 |
120g |
100g |
80g |
色合い(濃縮ブドウ果汁) |
濃(120g) |
中(100g) |
薄(80g) |
クエン酸 |
大さじ1 |
大さじ1 |
大さじ1 |
メンバー |
渡辺、守安、山中、原、芝 |
大和、池田、井上、黒葛、石井 |
川野、谷野、守分、村田、井上 |
5 買い物リスト
・おたま×3・カセットコンロ用ボンベ・濃縮ブドウ果汁・鍋×4(一つは煮沸用)
・グラニュー糖2kg・布巾・クエン酸×1・洗剤(食器洗用)・桃(清水白桃シロップ漬け)3kg
6 買出予定日 平成25年6月27日(月) 池田遼・井上彩色
このときジャムを作るのは全員初めてでした。インターネットなどからレシピを検索し、分量などを計算し、なにはともあれ、第1回の試作品作りの計画と準備が整いました。
Do(実践)
いよいよ実践の日、メンバー15人を3つのグループに分け、それぞれのグループごとに砂糖の分量を変えて、3パターンのジャムを作ってみました。完璧な計画を立てたつもりでしたが、計画はあくまでも計画。なかなか思うようにはいきませんでした。
1 実践の流れ 5時間目:原材料の切り分け、瓶の煮沸、桃の軽量等
6時間目:ジャム作り
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Aグループ |
Bグループ |
Cグループ |
生産個数(瓶) |
3 |
3 |
3 |
なべ(個)
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1 |
1 |
1 |
ガスカセット(本) |
1 |
1 |
1 |
桃(清水白桃シロップ漬) |
640g |
640g |
640g |
グラニュー糖 |
120g |
100g |
80g |
濃縮ブドウ果汁 |
120g) |
100g |
80g |
レモン果汁 |
大さじ1 |
大さじ1 |
大さじ1 |
※クエン酸の替わりに、レモン果汁を使った。
※清水白桃シロップ漬けは2kgが1ロットだったため、グラム数が減った。
※生産個数がどのグループも3瓶しか生産できなかった。(Plan(計画では各グループ10瓶)
Check(評価)
出来上がったジャムは、メンバー全員で試食をして、味、色、香りの3項目に分けて評価表を作り、評価をしてみました。評価結果は以下のとおりです。
1 日 時:平成25年6月4日(火) 5・6時間目
2 場 所:商品実験室
3 準備物:試作品ジャム、食パン、プラスチックスプーン
4 評価結果
5 評価方法:5段階評価の平均法
6 分析結果
・濃縮ブドウ果汁が多いと、桃の香りがなくなってしまう
・濃縮ブドウ果汁が多いと、色も濃くなりすぎて、きれいではない
・味も濃縮ブドウが多いと桃の味がしなくなる
・ジャムをジャムだけで食べることはあまりないので、ジャムBの味(パン付)を重視
・製造原価は370円/1瓶かかった
7 総合評価
・シロップ漬けは甘かったので生の白桃ではどうなるか検証する
・濃縮ブドウ果汁の弊害が生じたので別のもので検証する
・次回の試作品は、タイプBのジャムに決定した
Action(改善)
評価と同時に、改善点を洗い出しました。自分たちで作ったジャムなので、それなりに美味しかったのですが、「商品」と呼べるには程遠いものでもありました。
1 原材料:「清水白桃シロップ漬け」と「生の白桃」を使って比較する。
2 添加材:濃縮ブドウ果汁をやめて、ワインを採用する。
3 製 法:前回の製品は、色、味、香り等にバラつきがあった。
今回は原材料、添加材、火力、時間、かき交ぜ方等を標準化する。
4 その他:色はBタイプに統一する。
販売実績と販路の拡大
このように開発が進められた、私たちの「玉島桃ジャム」はこれまでに玉島祭り(100個)と、本校の学園祭(100個)で販売を行いました。学園祭では前日にプレス発表されたこともあり、その効果は大きく、販売開始から35分間で完売してしまいました。完売は喜ばしいことではありますが、買い手側からするとこれほど不都合なことはありません。このとき私たちは、お客様に対して大きな機会ロスを与えてしまったことになります
。11月16日(土)・11月17日(日)には、天満屋岡山本店の地下で販売を予定しています。この天満屋での販売実習では、白ワイン仕立てのピュアホワイトを200瓶、ロゼワイン仕立てのスウィートロゼを200瓶販売する予定です。できるだけ完売することなく、最後のお客様にまで商品を提供できるよう、計画的に取り組みたいと思います。
4 アイデアの実施・運営方法、地域との連携方法
これまで4月から約8ヶ月間にわたって、玉島桃ジャムプロジェクト進めてきました。このプロジェクトもいよいよ最終段階に差し掛かっています。
私たち商業高校生の社会的任務は、学習活動を通して地域資源を活性化することにあると考えています。今回のプロジェクトでは、玉島の白桃、船穂のマスカット(白ワイン)、真備のピオーネ(ロゼワイン)の3つの地域の3つの特産品を融合することに成功しました。しかし、本当に大切なのはこれからです。私たちはこの商品を地域に定着させていかなくてはなりません。そのためには、この商品を地域に提供し、地域で生産し、地域で育てていただかなくてはなりません。
今のところ、この商品は研究協力者でもあり、現在商品の製造元となっている玉島味噌合資会社に継続的な製造をお願いする予定になっています。玉島中央町で生まれ、玉島中央町で育てていただければ、企画者としてこれほど嬉しいことはありません。
5 期待される効果
今回のプロジェクトが順調に進むことで、玉島の特産品に「ジャム」というカテゴリを定着させることができると考えられます。今回の取り組みで分かったことは、現在玉島も個人で桃を使ったジャムを作られている方が多くおられるということです。しかし、玉島おかみさん会の朝原さんが言われる玉島にないジャム製品というのは、商品名に「玉島」という地名を背負った商品だということがわかりました。今後このプロジェクトが進むことで、私たちが作った、「玉島桃ジャム」が「玉島」を発信してくれることを期待したいと思います。
6 このアイデアにかける思い
今回の「玉島桃ジャムプロジェクト」は、今回の実践をとおして、玉島産の清水白桃のシロップ漬けを使用することに決めました。生の桃を使う方が、研究の結果からも美味しいことがわかったのですが、生の桃は旬の時期があまりにも短く、安定した商品提供ができません。しかしシロップ漬けを使う理由はそれだけではありません。玉島で生産される清水白桃のうち、商品として店頭に並ぶのはほんのわずかです。少しでも傷が付いたり、いたんだりすると、その桃は「クズ桃」として処分され、痛みのひどいものは畑の肥料として捨てられたりもします。しかしそんな大量の「クズ桃」をシロップ漬けにして保存している人たちもたくさんいることを、今回の実践をとおして知りました。
今回の「玉島ジャムプロジェクト」はただ単にジャムを開発して販売することが目的ではなく、この大量に保存されている、清水白桃のシロップ漬けを商品化することで、玉島全体の第6次産業(生産→製造→販売)を立ち上げることに本来の目的があるのです。 さらに、酵素的褐変を防ぐために使用したワインにも大きな意味があります。
今回のワインには、「ふなおワイナリー」のワインを使用しています。使用する白ワインの原材料は、船穂地区の「マスカット・オブ・アレキサンドリア」です。そしてもう一つ使用するロゼワインの原材料は真備産の「ニューピオーネ」です。玉島産の清水白桃に、この2種類のワインをそれぞれ使用することで、「玉島」・「船穂」・「真備」の3地域の特産品が融合されることになります。 結果、私たちの開発したジャムが販売されることで、「玉島」・「船穂」・「真備」の3地域をPRできることになります。
「玉島桃ジャムプロジェクト」によって融合される地域と特産品
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